平成20年度 荒尾市医師会 事業計画

去る3月11日、東日本を襲った震度9の大地震、それに引き続いて起こった10メーターを超える大津波、地震には耐えたが津波により引き起こされた福島原子力発電所の冷却機能の喪失による放射能漏れなど、目を覆う大災害には日本国内のみならず、全世界から同情と激励、それに支援の輪が広がっている。我が医師会に於いても、日医の義援金募集に多くの会員より多額な浄財をいただき、JMATや被災医療機関への支援に多大な貢献をしている事に感謝します。
医療界では長年続いた自民党の官僚主導による医療費抑制策から、政権交代により10年ぶりに大病院・救急医療・小児科・産科等を中心に僅かではあったが、前回診療報酬の改善が見られ、来年の介護保険との同時改正に向け、今日まで日医をはじめとして各専門医会や病院団体など崩壊した地域医療の再生の為に検討、交渉を勧めてきた。しかし今回の大震災を受けて、改定に備えての事前調査が十分できないとの理由で、先の日医代議員会では今回の医療・介護報酬の同時改定は見送る方針を表明した。しかし代議員会の席上では、結果的には見送ることになっても、今回は前回の改定で取り残された診療所を中心に改善への交渉は粛々と進めるべきとの意見が大勢を占めた。
政界を見ると、政権交代して1年半、管総理大臣のリーダーシップに疑問があるが、民主党内での内輪もめの様相を呈している。この非常時に政権与党は一致団結してすべての事にあたってもらいたい。自民党の様に首相がくるくる変わるのは対外的にも、国内的にも好ましくない。よほどの大失態が無い限り任期を全うし、その上で国民は再評価をするべきであろう。
地域医療については、前回の改定で急性期、高度医療を担う大病院は、大きく収益を伸ばしたが、地域医療で重要な一角を担う診療所、特に有床診療所は相変わらず存亡の危機に瀕している。介護福祉サービスに関しては国家財政からの支出を渋る前政権の不十分な制度の為に老人の孤独死、老々介護や介護退職の行き詰まりからの自殺や殺人事件の悲劇が後を絶たない。憲法には「国民は健康で文化的生活を送る権利を有する」と謳っているが、団塊の世代が高齢化するにつれ、安心して老後を送れるように社会保障の早急な改善が求められる。
日本医師会においては、執行部の捻じれを心配されたが、この1年、3名の副会長はそれぞれの担当で会長を補佐し、常任理事はその役割を果たすべく、昼夜を問わず関係機関と交渉を行い、特にこの震災に際してチームワークは益々強固なものとなっている。
我々地域医師会は、わずかに社会保障費の見直しの兆しがみられる今日、目覚しい発展を遂げている医学医術が21世紀の国民の幸福に寄与するよう医の倫理の高揚、医療の質の向上と医療安全対策推進に邁進し、市行政と共に医師の務めとして地域住民の健康維持増進のため一般医療はもちろん、救急医療・予防接種・医療保護など福祉行政・審査会、主治医意見書など介護保険事業などに、献身的に地域活動を続けねばならない。また我々会員は、更に良質で効率的な医療を提供する為に、日々研鑚を重ねると共に、診々連携による共存共栄に心がけ、周辺地域中核病院と共に病診連携の更なる緊密化を推進し、医療機能の分化を促進し、地域住民との信頼関係を構築しながら医療を提供しなければならない。
また医政にもっと関心を持ってもらいたい。医療を含む社会保障は平時の国家安全保障であり、医療の改善のためには日医が以前より謳っているように、政権与党との交渉しかない。「医政なくして医療なし」の原則の基、医師会会員一同政治活動に目覚め、日医・県医と連携しつつ、積極的に医政活動に関わるべきである。ノンポリでは改善は望めない。
おわりに保健医療福祉の充実は安全安心な市民生活の基盤であり、このような理念の下に21世紀に於ける地域医療の更なる充実・発展の為、会員一致団結し、地域住民が期待する保健医療福祉の実現に向け、諸種事業計画を実施する。

重点項目

1.東日本大震災への支援

今年は大震災、原発事故が発生し、15名の医師を含む3万人近くの犠牲者が出ました。30以上の医療機関が全壊等で診療不能、200以上の医療機関が中小の被害をこうむっていて、復興には長期間を要すると思われる。日医を中心にJMAT、被災医療機関への支援を続けねばならない。我々が出来る事は限られている。日医・県医と連携し、JMAT派遣・義援金での支援を続けなければならない。

2.倫理の高揚

医師は地域社会のリーダーであることを意識し、自ら資質の向上に努め、驕ることなく、お互いを尊敬し、自他共栄を基本とし、患者の診療に際しては常に患者の立場に立って丁寧な説明に努める。

3.生涯教育の推進

1.日医・県医、医学講座の推進に努める。
2.本会独自並びに隣接郡市医師会との学術講演会の共催、研修強化に努める。
3.内科医会・外科系臨床医会・循環器勉強会・消化管画像診断研究会・漢方懇話会・小児救急研修会・整形倫理の高揚外科勉強会等の研修の充実に努める。

4.地域保健に関する事項

(1)学校保健活動の充実
少子社会が進み、小中学校の統廃合が進む中、学校保健委員会を各校で開催し、知育・徳育・体育・食育の向上に貢献し、児童生徒の心身の健全育成に努める。
(2)健診活動の充実
特定健診・特定保健指導に主体的に取り組み、地域住民の成人病予防、メタボリックシンドロームの改善、ロコモティブシンドロームの改善ひいては健康寿命の延伸を目指す。
(3)産業保健活動の充実
地域保健との統合が検討されているが、認定産業医を中心として、窓口相談・訪問指導を継続し、地域の産業を担う労働者の健康管理を指導する。
(4)地域スポーツ活動への協力
市民体育祭や各種スポーツ大会に会員は資格の有無を問わず医師として協力し、安全・競技力の向上に貢献する。
(5)健康教育講座の充実
地域や企業からの講演依頼に快く応じて健康講話を行い、オープン化された健康教室を継続・充実し、市民は何時でも参加出来るようにする。
(6)健康福祉まつりの充実
老若男女、各種団体が相集い、地域住民の健康への関心を高めるために、三師会が中心となり活動を継続し、盛り上げているが、会員の参加者が固定されている感が否めない。全会員が数年に一度は参加・協力するように努める。

5.医療対策に関する事項

(1)小児平日夜間救急診療体制の堅持
市民病院の小児科常勤医が確保されつつあるが、平成17年5月より発足した体制の充実発展のために、市民病院救急医とともに隣接大牟田医師会および大牟田市立総合病院と連携し、永続性のあるものに構築するとともに、玉名郡市医師会と共同して小児診療の研修に努める。
(2)救急・休日医療対策
市民病院に救急医が着任したが、本来の重症患者の受け入れ、専門的チーム医療に専念できるように消防救急隊と連携を密にして一次医療、とくに平日診療時間帯での一時救急医療は「かかりつけ医」である医師会員が積極的に担う様に、また休祭日における当番医でも、軽症患者の受入れに積極的に努める。昨年度から大牟田医師会と共に休日眼科診療が始まったが、耳鼻科の輪番制の要望もあり今後の取り組みを大牟田医師会と共に前向きに検討したい。
更に先日(4月24日)の日医代議員会でも問題提起されたが、タクシー代わりに救急車を利用しないように、窓口にポスターを掲示するなど市民への啓発に努める。
(3)広域災害への対応の組織づくり
消防・行政と連携を密にして、災害時の救急体制表を作成し、年間数回の模擬訓練や連絡網のテストを行う。
(4)医療事故防止対策と相互支援対策
不幸にして事故発生時は組織を利用した救急処置を行った後、早期に荒尾市医師会を通じて、県医師会へその後の対応を依頼する。
事故予防のためには医師と患者との信頼関係を重視し、医療機関での安全対策を強化するため、近隣医師とネットワークを作成するとともに後方二次医療機関との連携体制を推進し、出来上がった登録制の充実を目指す。
(5)医療施設の機能分担と相互連携の推進
医師不足による地域医療の崩壊の中ではあるが、地域中核病院はそれぞれ専門分野の分担を進め、重症患者の専門的チーム医療による入院・手術を、診療所は病院(二次医療機関)からの受け皿として回復期のリハビリおよび入院・外来・在宅医療と施設までの中間施設として、また終末期医療など機能分担の推進を図る。
(6)適正な保険医療の確立及び医師会の自浄作用の活性化
会員は検診とも捉えられる過剰な検査を控え、重複受診にならないように、適正受診を指導し、良識ある日常診療に努め、信頼できるジェネリック薬品は積極的に使用し、限りある医療資源を有効に利用する為、公正適正な保険診療に努める。また医師会としては薬効による処方を認めた厚生省通達を無視した保険者再審査をしないように市国保に要請する。
(7)医療情勢の検討
政権交代による民主党の社会保障重視によって変わる医療施策について、インターネット・日医ニュース・メディファックスなどからの情報をもとに「あらお医報」で、会員へ最新の情勢を伝達する。

6.介護保険・障害者自立支援法の公平・公正な運営

民間に開放された介護保険事業は11年を経過し、地域包括支援センターや介護予防事業、さらに障害者自立支援法などが運用されている。医師会員(特に介護保険事業に携わっているもの)は地域住民の立場に立ち、公平公正な介護保険等の運営が継続できるように、介護認定審査会・障害者自立支援審査会・介護支援専門員協会などに積極的に関わるべきである。

7.訪問看護ステーションおよび居宅介護支援事業所の健全な運営

順調に経過していたステーションの運営が昨年度は大きく収益が低下しました。今後とも団塊の世代が高齢化するにつれ、利用希望者は増加する。数少ない医師会事業としての維持発展を図るために、会員の皆様の変わらぬ紹介をお願いしたい。

8.個人情報保護法の遵守と情報化社会への対応に関する事項

個人情報保護法に関しては医療介護共にその遵守につとめなければならない。
インターネットによる情報収集・伝達の手段として会員各位はパソコンを設置し、インターネットを利用した医師会ホームページを情報伝達手段として推進する。
一方国はレセプト請求のオンライン化を進めているが、高額な設備投資を医療機関に強いるものである。またIT化が困難な高齢医師に対して医師会としてその相談支援に取り組まなければならない。

9.会員福祉の増進

1.厳しい医療環境の中であればこそ、会員の意思疎通をはかることが大切であり、会員および婦人会会員相互の親睦をはかる為、旅行、ゴルフ、登山、カラオケ、麻雀大会など各種レクレーションを充実し、多くの会員が参加できるよう企画する。
2.医療事故・医療トラブルの緩和のために相談できる弁護士の推薦リストを作成した。事故ある時は医師会に届けるとともに、ケースにより推薦弁護士、県医師会処理委員会に相談し、任せて本来の仕事に専念できるように努める。
3.労働保険事務組合の円滑な運営と共に、会員の高齢化に伴い減少する簡易保険・生命保険加入者の勧誘に努める。。

10.広報活動の充実

激変する社会・医療情勢の中、迅速かつ適確な情報伝達を内外に向けて発信し、医師会活動のPRに努める。

11.医業経営の安定化と医師会活動の強化に関する事項

医療の公共性のもと、医療の安全をはかると共に地域住民に良質の医療を提供する為には医業基盤の確立が必須の要件である。その改善の為には会員各位の医政に対する意識の改革が必要であり、強力な医政活動が必要である。即ち医業経営基盤の確立と医政活動とは表裏一体のものである。幸いにも今日の医療状況の改善を謳う民主政権となった現在が千載一遇のチャンスであり、与党とのパイプを有する原中日医会長をバックアップしていく。

12.医師会館の建替え

数年前より提案していた医師会館の建て替えについては、好ましい地区に充分な広さの土地が確保でき、昨年の臨時総会で承認を得て、現在着々と計画は進行中です。設計監理会社を決定し、修正し、建設業者の「見積もり合わせ」、または「入札」を予定している。大震災による資材の高騰が不安材料ではあるが、既存の倉庫も有効に利用して会員が利用しやすい憩いの場も作り上げる予定です。昨年も提案していますが、会館が出来上がった後も会館の維持管理、数十年後は再度建築の必要もあり、その他、地域密着型介護施設・サービス付き高齢者賃貸住宅・職員子弟用保育所などの建設に関しても、会員の皆様には維持管理費として資金の積み立てをお願いしなければならないと思います。県医師会館の会館建設負担金・震災への各種義援金など出費多端な折ですがご理解とご協力をお願いします。

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